人として中2から何も成長していない!?

 俺は今、梅雨を飛び越えてもう雨季と呼んでも差し支えない天候の現代日本・東京に住んでいるが、なぜここまで梅雨が長引いているかというと去年俺が「天気の子」に否定的だったらしい。

 雨季だけにウキウキ! とは行かず家族から厳に外出禁止を言い伝えらている俺は特に何もせず部屋の中のソファの上で横たわりながら、テレビ番組を見ている。

「お前ただでさえ無職なのにコロナ持ち帰ったらどうなってんのか分かってんだろうな?」

 的な圧にビクビク震えながら、テレビ番組を見ています。

 お前、前回あんだけ真面目にコントロールが云々とか言っていたのに家族からの命令はすんなりと受け入れるのかといったご批判には真摯に向き合いたい。しかし反論させてください。家族の好意によって生き延びている俺が家族から反感を持たれたらもうそれは死を意味します。働けません。というか働きたくありません。反抗にも限度があります。終わりなき反抗もカッコいいですが、それやっている人は大体悲惨な死を迎えます。

 大事なのは折り合いなのさ……。本棚の上にぴょこりと置いてある星のカービィのぬいぐるみを丁寧に撫でる俺。降り続ける雨。めくられるカレンダー。道にまばらな通学帽とランドセル。サンデーモーニングのスポーツ御意見番で滅多にあっぱれを出さなくなったリモート出演の張本勲。謎の快進撃を見せる東京ヤクルトスワローズとそれとは対照的に謎の不振が続く山田哲人

 そう、本来なら東京オリンピックが開催され日本国民がスポーツに熱狂的になっているはずの2020年7月下旬は、諸般の事情によってオリンピックの開催そのものが2021年に延期され、また別の熱に浮かされているようで、俺がこのブログでCOVID-19に言及するのももう数え続けて幾星霜といった感じだ。

 さて、「日本のみなさん心してオリンピックの開催に備えましょうアンド開会式はちゃんと見てくださいね」的な意味で設けられたはずが「お前ら外に出るなよ」に意味合いが変わった4連休に俺が一体何をしていたのかというと……アニメ・アイドルマスター、通称アニマスの一挙放送を見ていた。

 アニマスももう9年前の作品だ。放送当時中学2年生だった俺はぼちぼち人並みに深夜アニメを見ていて、アニマスの高いクオリティに子供ながら驚いたものだが、それももう遠い記憶の彼方。流石に俺も大人になった。いい大人がアイドルアニメを見て心動かされることなど…………あった。

 気付けば俺の手はティッシュ箱に伸び、涙を拭っていた。というか当時見ていた時よりも泣いた気がする。当時の俺は星井美希というキャラクターに心奪われたものだが今見ると……律子、いいよな。俺律子みたいな人と結婚したい。実際付き合うと律子みたいな人が一番いいんだよ。俺童貞だけど。そんなの関係ないんだよ。

 雪歩もいいよな。ああいうエキセントリックな感じが、と書いたところで「どうせあんたは弱々しい女の子が好きなだけなんでしょ!?」ってもう一人の俺(都内中堅女子中高一貫校に通う高校2年生。バレーボール部の副キャプテン。ポジションはリベロ。気さくで誰とでも明るく接することが出来るが、その人当たりの良さのせいで頼まれた仕事はなんでもやってしまうことと親友らしい親友がいないことが悩み)に怒られたのでもうやめます。

 一番怖くなったアイドルは春香だった。何なんだよあのリアルな壊れ方は。9年前と受ける印象が全く違う。怖いよあの子は。というか誰か定期的にメンタルケアしてやれよ。明らかに「私ヤバいです」みたいなサインを出してただろ。異変に気がついてやれよ。人はおおよそゆるやかに壊れていき、その壊れ方は世界と似ています。これをセカイ系と言います。

 ちなみに一番泣いたところは「やった!」のシーン。これは9年前と同じで、人は成長するところもあるし、しないところもある。そのことをポジティブに教えてくれたのがアニマスだった。のかもしれない。