俺は引きこもりじゃねえ!

 日記というものを書こうとするとき、実は一番大事なのは「この一日をちゃんと記しておこう」と思えるような魅力的な日々の方で、日記が書きたいから魅力的な一日にするというのはいささか本末転倒な気がするんですな。

 つまり、この6月、ほとんど何もない、と言っていい毎日が続いていたということで、しかし俺は粋に生きる男。頑固一徹。「ええい、ワシャブログのネタがないからといって日々を彩ろうとは思わんぞ。楽しかった思い出が先にないと書かん!」と壁に向かって発声練習がてら言っていた。もちろん何もない一日よりは魅力的一日のほうが人生を過ごす上でいいに決まっています。

 しかし6月は何もなかった……。先日友人たちと映画を見に出かけた以外で外出した記憶がない。先輩、これじゃ僕引きこもりッス。引きこもりが殺されたり殺したりするニュースが多い中、引きこもりという状態は家庭の中で双方気を遣うのだ……。

 でも俺は引きこもりではないと自負している。外出するし。と思いながら母親と一緒にニュースを見ていたら引きこもりの定義は「軽い買い出しや趣味のための外出以外では家から外に出ない人」って紹介されてた。その後の食卓の雰囲気は分かりますね? 俺は葬式の予行演習でもしているのかと思ったよ。

 よく考えてみりゃ軽い買い出しと趣味のための外出以外では外から出ないって、無職全員そうなんじゃないのか? 仕事してりゃオーケーってのか? おい! この社会はよ、いつから無職=引きこもりなんて乱暴な図式で世界を当てはめようとしてきてんだ?

 俺は引きこもりじゃねえ! と部屋の中で叫んでいたら、壁に貼っていたアスカのポスターがぺろっと剥がれた。「狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり」という有名な言葉があるが、現代風に言い直すと「引きこもりの真似とて部屋にこもれば、すなわち引きこもりなり」ってことになるんだろうな。いや、真似というか部屋にこもってりゃそりゃ引きこもりだろ。

 引きこもり脱却のために何かしないと……でもできる何かってなんだ? 貧すれば鈍する。今まじで手持ちの金がない状態でチョベリバ。金は天下の回りものって言うけど俺のところには全然回ってこないよ。高卒無職はお断りってか? 学歴フィルターか? 天下にも学歴フィルターがあるのかよ! 格差社会もいい加減にしろ!

 朝方にお気に入りのアニメを見ながらふと友人たちが次々に就職活動を始めているのに一体何をやっているんだ……と一人で落ち込む日々が……ないな。本当に危機感のなさだけは一級品だから。最近はこの危機感のなさを生かして何か仕事につながらないかと近所のヤクザの事務所をうろちょろしてる。あれ? 俺もう引きこもりじゃないじゃん! なーんだ、問題解決。良かった良かった。

 ちなみに見ているアニメはスペース☆ダンディ。ダンディみたいな男に憧れながら、俺も生まれる時代を間違えたとひとりごつもんよ……。来世があったら次は宇宙を旅する男になりたい、と心の底から思ったね。もしくは喫茶店のマスター。