憂はShock!

 毎年これぐらいの季節になるといよいよプロ野球ペナントレースも最終盤に突入し、各球団も若手選手をお試し的に使うものだが、だいたいそういう選手は高卒選手であって、俺も二十歳を超えると年下の選手も増えてきて、だいたい「ああ、彼らはもうプロ野球の一軍にいるというのに、俺は一体何を……」と、鈍い衝撃を受けるわけだ。ここ最近一番ビックリしたのはヤクルトの高卒ルーキー村上宗隆がプロ初打席でホームランを放ったこと。俺は人生の中でホームランどころかヒット一本も打てていないというのに……。

 ただそういう物事に立ち会っても一切焦らなくなってしまったのが無職の性で、というか年下の人の活躍に一々焦っていては無職なんかやっていない訳であって、そういう意味において俺はもう仙人に近くなっている。心なしか性欲も無くなった気がする。昨日3回くらい抜いたけど。

 ただ仙人になったということは限りなくキラキラした青春から遠ざかったということで、思えばウルトラ俗物だった人生を振り返ってみてもキラキラ青春の記憶がどこにもないので別にいいといえばいいが、タイムラインに流れてくる同級生たちのキラキラ青春を見ると、俺の中の仙人じゃない部分が、隠してた感情が悲鳴を上げてるわけで、インターネットの世界に余計のめり込んで行ってしまうのだ……。

 いいんだも~ん、俺はお前らがキラキラ青春を送っている間に、意識はしていなかったけど意外と美しかったこの世界と触れ合っているから。きれいな顔していたんだね、知らなかったよ。

 そう、憂鬱は良くない。憂はShockだ。涼宮ハルヒよろしく憂鬱になるとろくなことにならない。睡眠薬をガバ飲みした挙げ句思い出すだけでもう一回睡眠薬をガバ飲みして自殺したくなるほどの恥ずかしいことをしでかすわけで、本当に憂鬱は良くない。俺は無職なので、将来がしっかり保証されてる大学生様と違って、マジで生きるか死ぬかみたいなライブ感で日々を送っている。貧乏の家庭の無職の切れ味はちょっと違うぜ、触ると怪我する。怪我してるのはおれの人生の方だから。

 怪我したおれの人生を癒やしてくれるオンナノコ絶賛募集中。できれば中原岬みたいなオンナノコがいいが、リスカとかするのはマジ勘弁な。いや、女募集している時点で全然仙人じゃないじゃん。性欲バリバリじゃん。大丈夫か? 自己が分裂していないか? 

 ところで中原岬はいつになったら俺の部屋に来てくれるんだ? 毎日創価学会の会館の周りをうろちょろしているのに誰からも声をかけられないが、みんな俺のことが見えているのか? 無職が長すぎて、仙人になりすぎて、雲の上の人になりすぎて、影が薄くなったのか? 

 誰か教えてくれ! 俺はこれから先一体どうなってしまうんだ! と部屋の中で叫んだら、たまたまつけていたテレビから北斗の拳の映像が。そう、いつの時代も己の人生に迷うとき、拳だけは裏切らないと達人が教えているではないか……。ラオウしかり、ケンシロウしかり、一人の女をもとめ合うことに己の鍛え上げた拳を振るっているではないか……。迷うことは何もなかった。俺の体だけがあればいい。この拳一つで、いつの日か、必ず……。

 人生を取り戻せ!