Plan8VS7月の俺

 ほとんど名前だけの阪神が連れてきた新外国人みたいな梅雨が明けて夏がスタート、みんな平成最後の夏と呼んでいるが平成最後の夏と予め決まっているものに対して無理やり盛り上がろうとしているのはあまりエモ(ここでは江戸弁による「粋」の意)ではない気もする。これは単に俺が盛り上がっている諸氏を妬んでいるだけなので気にしなくていい。

 気が二度続いて意気込んでいる俺の夏といえば、社会から断絶されこのままじゃ無敵の人ならぬ無職の人になっちゃうよ~と嘆いていたけど、ちょっと落ち着いて考えたらそもそも俺はもう無職の人なので、急いで社会復帰するために区民プールに行った。

 そこで待ち受けていたものは……溢れんばかりの小学生の隊列と何もすることなくて水の中で歩くだけしか考えてないようなババア。これじゃ市民プールじゃなくて庶民プールだが、俺の夏だけは繰り返されても困るので仕方なくババアに混じって泳ぎ始めた。小学生と区別されてんのは俺がロリコンオタクっぽい見た目をしているのと、そもそも小学生はスイミングスクールの生徒なので泳ぐレーンが一般客と違う。何を好き好んでお前ら金払って泳ぎ方教わってんだ。河童の子孫か?

 泳ぎ疲れて三千里、ふと自由遊泳レーンから巨大室内温水プールの天井を見上げてみるとなにか意味不明な抽象画があって、例えて言うなら岡本太郎を必死に真似した美大生みたいな絵だったが、それが屋上にあることも含めて一切意図が分からなかった。

 天井から視線をずらすと、プールの中が全て見渡せる巨大展望室みたいなのがありその中にさっきの小学生の数と同じくらいの親がいてゾッとした。あいつら絶対俺(あまりにも太すぎるため屋上から見ても一発で怪しいオタクだとわかる。というか一人で平日にプールに来てる成人を超えたくらいの男は一発で怪しいとわかる)のことを見て「あのオタク気持ち悪いね」とか「プールに来ないでほしいね」とか「あのオタクと同じプールの中に我が子がいると思うとゾッとするね」とか言ってるに違いない。俺にはわかる。

 慌ててプールサイドに併設されてるサウナの中に飛び込んだが、その中に小学校低学年くらいのウキウキ女児三人が強襲。いつどこで誰がどう見ても一刻も早く俺とは隔絶させるべき存在ナンバーワンが三人で来たのでビビってその場でありもしない罪を自白しそうになった。アムロが最初にジェットストリームアタック見たときもこんな気持ちだったのかな、俺は社会からずっと踏み台にされてるけど。

 自分の被害妄想とそれが妄想ではないことを証明するかのごとく襲ってくる数々の事案の種が舞い込んできて急いでお台場に行ってサングラスかけて八嶋智人の解説を聴きたかったが、2時間500円という価格に割を合わせるために必死で泳いだ。幸いにも一般人専用レーンにはババアしかいないので性欲が一切湧き立たない。いや、女児にも湧き立たないが……。

 そういうわけでプールは怖い。スポーツセンターから出てきた時の夕焼けの美しさはエモかったけど、夏とプールがエモいだけで俺は全くエモくない体験をしていたことを思い出して吐きそうになった。あと平泳ぎしまくってたらあんだけ鈍いペースで泳いでても異常に筋肉痛になって箸よりも重いもの持てなくなったのでもう行かないと思う。

 平成最後の夏をどうエモくするか、俺の挑戦はまだ始まったばかりだ。幸いにも今年の夏は長いという。時間はまだまだある。夏休みの宿題は最後までやらないタイプだったので、エモ宿(エモい宿題を略すとこうなる)の成否は8月の俺に任せて、7月はちょっと休む。