海は死にますか? 山は死にますか? ところで暑くないですか?

 花は桜木男は石橋と言ったのはとんねるずの背の高い方だった気がするが、帝京高校卒で生粋の板橋区民である彼らと俺に一切の関係もなく、散ってしまった桜に思いを馳せながらしかしなお未だに人がクソ多い上野公園でゴールデンウィークの存在を心から憎む日々を送っているわけで、つまり俺は無職だからエブリデイが毎日なのだ。

 というわけで4月28日にフォロワーと酒を飲みに行く会が突発的に実施された。メンバーはいつものIとE。最近Eは大学院に進学し人生ウキウキ路線で無事結構、Iは大学中退したものの給料日直後で財布ウキウキ路線。俺はまあ、なんかウキウキ路線というわけ。

 さて全額奢りとの噂を聞き付けて四ツ谷に現地集合。この日もふだんと変わらずこれもう半分夏だろ、というような気候だった。ところでこのフォロワー二人には今月のはじめにも会っているし、高校時代の友人よりも会っている。無職なのに人付き合いだけは多いと出費が多くて大変だが、その割にリアルな高校の友人には引きこもりだと思われていたのはどういう理由からなんだ。

 最近出来たという飲み屋に行くとこれはまあ本当に最近出来たんだなと小学生未満幼稚園生以上の感想になったが、なんか後ろの席の女はオタクっぽいし隣の席のリーマンもオタクっぽいしさらに向こうのおじさんたちは人生終わってるっぽいし、各位好きにやっている様子。俺も早速慣れない酒を飲みながら決して前回のような失敗はするまいと自制していたら飛び込んできたのはメニュー表にあったロマネ・コンティの文字。値段驚くことなかれ450万円。居酒屋でロマネ・コンティを飲む人間がいるはずもないからちょっとしたジョークのつもりだろうが、更に飛び込んできたのは前回よりも200万円値上げしましたという文字。え? 売れたの?

 酒の味は分からないがつまみの味は結構いけて、しかも値段がコンビニのホットスナック並なのでマジでホットスナック並の感覚で食っていた。ふえ~これ以上食べたら太っちゃうよ~と泣きながらフライドポテトをバカ食い。飲み会でフライドポテトを頼むやつって育ち悪くない? 俺の育ちはかなり悪い。

 楽しいひとときを過ごしたと思ったらカラオケ店へレッツゴー。カラオケでは無難に星野源(高くて歌えない)とか懐かし昭和メロディとか(懐かしすぎてメロディがあやふや)とか深夜アニメソング(歌っていると急に自己嫌悪が始まる)とかを歌っていた。Iがイカ娘を歌い出しカラオケルームはちょっとしたクラブとなり俺は踊り続けて世界はダンスホールになっていた。平成三十年のダンスホールです。大江健三郎見てるか?

 Eはいつも通り尾崎豊とか歌うしさだまさしを歌うし叫び散らかすし、お前一番社会に触れて大変そうなのにどこにそんな元気があるんだよという感慨もひとしおを超えて満潮で、つまり俺は完全にクッタクタ。イカ娘で頭を振りすぎて敗着となってしまった。

 カラオケ終了後Iの自宅がある国分寺へ。そこで別のフォロワー達と麻雀をする予定となり泊まる予定だったが、麻雀をしようと言い出した当のフォロワーはまだ到着してない。7時に到着する予定だったのに日付を超えてようやく登場したのはさすが皇帝の為せる技か。別のフォロワーが作ったバターチキンカレーを食べて(メチャクチャ美味い)、Iとその先輩であるK氏が見たというクソ演劇のものまねを見て始終爆笑。みなさんも一度「自我を持ったラブドール」は見るべきです。現代のお笑いの革命だ。

 時刻は3時を回ろうかという具合にようやく麻雀がスタート。東風だけ(YMOではない)というかたちだったが、これが盛り上がらない麻雀となった。見どころと言えば国士無双狙いを宣言していたK氏に対して、メタを仕掛けるかのように俺の切った一筒をポンしていった皇帝だろう。さすが皇帝、他人の役満は何よりも許さない性格なのだ。順位は俺がトップだった。

 その後K氏と好きなアイドルについて話し合ったあと就寝。翌日目が覚めると持ってきたリュックサックを一時的に枕に使ったのかクビに激痛が走って野球選手ならマジで引退する五秒前な感じだった。

 俺が寝泊まりしていた部屋には別の客人が来るそうなのでそそくさにリビングに移動。この家の住人であるF氏が作ってくれたコーンフレークを食べながら、いつの間にか時間がずらされていた高校の友人との飲み会を億劫に感じていた。

 フォロワーS氏と皇帝は競馬に向かうそうなので、俺もそれに乗じて国分寺を後にして一旦自宅へ。服を着替えてリュックの中身を整理。途中無性に食いたくなったマクドナルドで成人男性一日分のカロリーを摂取し、自分の増え続ける体重を悩む乙女な一面を見せながら今度は上野へレッツゴー。高校時代の友人が待ってるしな。

 さてなぜ俺が上野へ行くのが億劫だったのかというと、それは名探偵コナンの映画を見るからである。みなさん、想像したことはありますか? 成人男性四人が並んで名探偵コナンを見る光景(内大男二人あり)を。俺は想像しただけで恐怖のあまり奥歯がカチカチ鳴りそうだが、なんとその光景の当事者ともなれば奥歯をカチカチ鳴らすだけでは許してはくれないんだろうな、これは。

 かくして名探偵コナンの映画を鑑賞した俺は、公安がメチャクチャやりすぎなことに国家体制への怒りを感じ、革命への情熱が燃え盛り、そして福山雅治っぽい声したパチモンみたいな声したアーティストだなと思っていたら実際に主題歌は福山雅治が担当していた衝撃と灰原哀の可愛いカットが二つほどあったことに満足して映画館を後にした。

 さて映画館から出た俺たちだが時刻は大体22時前。もう高校生ではあるまいしこのタイミングで帰るわけでもないし上野には飲み屋が多くあるわけで後は野となれ大和朝廷。適当に安い居酒屋を見繕ってそこで飲んだ。

 途中オタクだと思っていた友人に彼女がいたり、無職であることを責められて真剣におすすめの職業を考えてくれるなどやはり持つべきものは友人だなと感じていたが流石に俺が司書は無理がありすぎると思うし。それとリアルが充実している人間はこんなに働きたがるものなのか? 俺には一切理解出来ないなその感情は。なんせ無職は毎日がエブリデイなのでね。

 あ、そうそう大切なことを忘れていた、4月29日は昭和天皇の誕生日。普段散々ネタにしているんだから誕生日くらい祝ってやらないといつ俺の枕元に化けて出て終戦詔書を読み出すか分からないのでここで祝っておこう。死んだ人間の誕生日を祝うのはなんとも間抜けで、それが天皇なら倒錯した右翼みたいだが、死んだ天皇の誕生日が祝日になっているのだから、別に昭和天皇も「あっ、そう」くらいで許してくれるだろう。