10/21

 世界が俺を攻撃している気がする。銃撃戦みたいな音しながら降る雨は俺が外出するのを妨げているように思えるし、父が家に帰ってくるのは俺が勉強することを阻害しているような気がする。金が無いのは俺が精神科に行くのを邪魔するためとしか思えないし、フォロワーが大学院に合格したのは俺に焦燥感を与えるためだけだとしか思えない。

 でも、そんな時、俺が布団の中に蹲って目の前に広がる暗闇と戦っている時、優しくそっと俺の肩に触れる手がある。

 振り返ると木之本桜の笑顔がそこにある。俺が彼女の手を握ると、さくらは少し驚いた顔をするけど、でもまたすぐ笑顔に戻って、俺を応援している。

 さくらが俺に向かって何か囁いている。

「大丈夫。絶対大丈夫だよ」

 そうか、その呪文があったんだ。

 世界が俺に敵しようとも、俺の、いや俺とさくらのこの呪文さえあれば、どんな状況だって大丈夫だ。さくらはずっと笑顔のままだ。俺も自然に笑顔になる。ありがとう、さくらと抱きしめようとしたら、俺のさくらは枕だったよ。

 毛布をかけてなかったからか今日の朝はひどく冷たく感じた。

 風邪、引いたかもな。